
【はじめに】
1953年5月29日。英国隊のエドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイが人類初のエベレスト登頂に成功した。これまで“神の領域”とされていた天空の世界が、人類の前についにその門を開いたのである。
それから半世紀が経ち、現代の登山家たちは8000メートル峰を無酸素で登頂し、ほんのわずかな装備を背に、南極から赤道直下に至るまであらゆる山々にその足跡を印すようになった。これらの偉業は登山家たちの超人的な肉体鍛錬と技術研鑽、想像を絶する苦しみ、そして燃えたぎる情熱が叶えたものだ。
しかしそのいっぽう、これは登山用具の発展なしには達成しえなかったものでもある。
登山用具の発展は、わたしたち登山者に大いなる自由を与えてくれた。アイゼンの登場は氷に閉ざされた美しい山々の姿を見せてくれたし、ピッケルの進化はこれまで登攀不能だったルートへ勇者たちを誘うようになった。またビブラム・ソールの登山靴や、ゴアテックスを使った山岳ウエアが安価で手に入るようになったことで、市井の人々も安全に山歩きを楽しめるようになった。
テントは山域を我が家に、シュラフは岩肌を寝床に変えてくれる。優れた用具たちはわたしたちを大自然の懐に解き放ってくれる“魔法の翼”なのである。
しかしここ最近の用具の急速な発展と成熟は、マーケットにカオスを産み出している。山岳用品店には色とりどりのウエアやさまざまな形のギアが溢れかえり、何を、どう選んでよいかわからないほどだ。とくに山岳サークルや同好会に所属しない一般登山者には(日本の登山者の大半はそういった個人だ)、道具選びのノウハウを教えてくれる先輩もおらず、いざ装備を揃えようと思うと途方にくれてしまうことが少なくない。いまや登山入門書や技術解説書とは別に、用具や装備を系統だてて解説してくれる、しっかりした“リファレンスブック”が必要な時代になったのではないだろうか。
そういった思いから始まったのが山岳専門誌『山と渓谷』の連載「山岳装備大全」だった。
この連載はひと月に1アイテムづつ装備を取り上げ、その発展の歴史、ブランド紹介と最新テクノロジー解説、そして具体的なギアの選び方を最新のカタログとともに紹介するもの。2007年1月から2009年6月までに取り上げたアイテムは30種類を越え、山岳装備の大半をカバーすることができた。そこで、当時掲載された記事に大幅な加筆・訂正を加え、単行本にまとめたものが本書である。
取材・構成・執筆は、ホーボージュンと村石太郎がひと月ごと交互で担当したが、本書では読みやすいように掲載順序を変えてある。そのためアイテムによっては時系列が前後したり、解説が重複する箇所があるかもしれない。また、登場する製品は雑誌掲載当時のモノであり、現在は仕様変更した製品もあるが、参考としてそのまま掲載してある。この点はどうかご容赦いただきたい。
また本書は装備そのものにフォーカスして書かれた書である。そのため、それぞれの用具の使い方や技術に関しては登山技術書を参考にしてほしい。山と渓谷社ではそういったハウツー書や技術書を数多く出版している。
本書がみなさんの山岳装備の充実に寄与し、すばらしい山行への道標となれば、筆者として望外の幸せです。どうか楽しんで下さい。
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出版企画の立ち上げから8カ月半。
たいへんな難産となった『山岳装備大全』(山と渓谷社)が、
6月23日(水)にいよいよ発売されます。
その発売を記念し、16日(水)にパタゴニアストア東京・大崎にて
スライド&トークショー「サスライのススメ3」を開催し、
その会場で限定50冊を先行販売することが決まりました!
当日は「山と渓谷」元編集長で、本書プロデューサーである
勝峰富雄さんにもお越し頂きます。
また希望者には不肖ホーボーがサインもします。
ライター村石太郎、フォトグラファー永易量行、
エディター宮川哲、デザイナー天池聖のチームが
全身全霊を傾けて作りあげた300ページの大著です。
正式配本より1週間も早いプレミアム販売です。
山岳装備大全ファンのみなさま、
そしてファナティックなギアマニアのみなさま、
どうかこの機会をお見逃しなく!
ではサスライでお会いしましょう!
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